燃焼室〈薪を燃やす部屋〉

最下段にレンガを何段積むか

土台の上に耐火レンガを何段敷くか?
それを考えた時に思い出したのは、ロケットストーブで実験をした時のことでした。

薪窯を作る2~3年ほど前、ロケットストーブを何パターンか作って実験した時の写真です。

この時は火床として1段だけ耐火レンガを敷き、その上で直に薪を燃やしました。
4回~5回ほどこのままの形でロケットストーブを使ってご飯を炊いたり、フライパンで調理したりしました。
その後でレンガ全体を別の場所に移したのですが、レンガをどけると火床の下になっていた芝生は焼け焦げていました。
芝生は翌春にも生えてこず、元通りになるのに数年かかりました。

つまり、火床が耐火レンガ1段だけだと、相当な熱が下に漏れていたということになります。

私の計画している窯はこのロケットストーブと違い、薪を燃やす部屋と基礎の間に灰が落ちる部屋があるので、一番下段の耐火レンガの上で直に火を焚くわけではありませんが、高熱になった熾火(おきび)が下段の耐火レンガの上にたまります。
それを考えると最下段の耐火レンガは1段では不安だったので、2段にしました。
今思えば、さらに基礎と耐火レンガの間にさらに断熱材を挟んだ方が間違いなかったかもしれません。


そしてこの最初の2段を積む時、初めて耐火レンガとアサヒキャスターを使用したのですが、
そこで予想外の事態が発生…
(そのハプニングの内容は、この記事の下部「予想外だったこと」に記載しました)

そのハプニングのために燃焼部の下の方が芋目地になってしまいました。

左のように目地が縦横にまっすぐ一直線に並ぶような目地を「芋目地」といいます。
一か所に亀裂が入るとその亀裂につられて縦横一気に亀裂が入る恐れがあります。
ですが左のような並び方になってしまいました。右の並び方が理想的です。
もうしょうがない…と割り切って次の段階へ。。

ただひたすら積む…

芋目地まっしぐら…

下から5段目より、やっと芋目地を避けるようにレンガを配置。

ロストルにはスノーピークの炭床を使用 →  snowpeak 炭床Pro L

ロストルが劣化した時に取り替えることができるように、ロストルは固定せず置くだけ。入口からロストルを取り出せるように入口のレンガのサイズを少しだけ調整しました。

なんとか設計図通りにここまでレンガを積みました。
白レンガの部分は国産SK-34を使用(SK-32でちょうどいいものがなかったため)

燃焼室の造り

燃焼室は上に向かうにつれ少しずつ狭くなるようにしました。これもフランス式の窯を参考に。
例えば、掃除機につけるホースの先を細くすればするほど吸引力は強くなります。先が太いと吸引力は弱まります。
そんなイメージから、ロストルをちょうど設置するあたりから丸い穴に向かうまで、ほんの少しですが空間を狭めてやり、穴から吹き出す炎の勢いを強めようと思いました。
でもその先でちゃんと煙突が吸引してくれる仕組みがないと成り立ちません。
そこで煙突を断熱二重煙突にして、ドラフト(上昇気流)を促したつもりです。

そしてロストル。
ロストルとは薪を乗せる網のことで、網の下から空気を取り込むことによって燃焼効果が上がります。
耐火レンガの上で直に薪を燃やすより、ロストルの上で薪を燃やしたほうがよく燃えます。

この仕組みを成立させるために窯の一番下に一つ部屋を設けることになりました。
結構大掛かりな構造になったのですが、着火・燃焼共に効率が良いことと、灰を下の部屋から取り出しやすいことから、一番下の部屋を設けてよかったと思います。

予想外だったこと①アサヒキャスターについて

私は耐火コンクリートとしてアサヒキャスターT13(コテ塗り用)を使用しました。
ピザ窯、パン窯によく使われる耐火性のあるコンクリートで、レンガを組んでいく際に接着材として使用します。
(耐火性ではないコンクリートは500℃~600℃の熱でひび割れの発生が始まり、強度が低下すると言われています)

別の商品で耐火モルタルというものがありますが、耐火モルタルは数百度の熱が加わらないと固まりません。室内で使用する場合や、窯の内部に使用するものらしいです。

アサヒキャスターを調べていてよく見たレビューは「パサパサで作業しづらい」「骨材が粗い」ということでした。

実際使ってみると、やはり通常のモルタルとは全く使い勝手が違います。
耐火「コンクリート」というだけあって、モルタルのようなキメの細かいものではなく、ゴツゴツとした大きな骨材が沢山混ざっています。

この骨材が邪魔になり、レンガとレンガの目地を予定の2mmにすることは不可能。最低でも1cmの目地が必要になります。そうなると使用するアサヒキャスターも大量に必要になります。
そこで、節約も兼ねてザルでふるって使用することにしました。
アサヒキャスターはネットで購入しましたが、送料込みで25kgで4,000円ほど。できれば使用量を抑えたいと思う値段です。

パサパサするという点ですが、これはアサヒキャスターが…というよりは、耐火レンガが恐ろしく水分を吸収するからです。
最初の2段はそこらへんの勝手が分からず迷走したのですが、作業するうちに分かったのが次の2点です。

①耐火レンガを水に漬け、しっかりと水分を吸わせてからアサヒキャスターを使うこと。
②アサヒキャスターは固まるのが早いので、少量ずつ使うこと。

水を含ませない耐火レンガにアサヒキャスターを塗ると、嘘みたいに一瞬で水分をもっていかれてパサパサになります。

予想外だったこと②耐火レンガについて

耐火レンガはホームセンターで購入しました。
国産の耐火レンガがいいのは知っていたのですが、近くのホームセンターには売っておらず、ネットで買うと送料が高すぎて買えません。
なのでホームセンターの耐火レンガ(メーカー名の記載なし。おそらく外国産)を使ったのですが、耐火レンガの1段目を作業していてすぐに気付いたのが以下の2点です。

①大きさがまばら
耐火レンガは一見揃っていそうで、並べてみると縦、横だけにとどまらず厚さまで若干の差があります。
直線であるべき辺が、緩やかな曲線になっているレンガもあります。
大きささえ揃っていればもっとスムーズにレンガを並べられたのに、大きさや厚さが違うために並べるのに微調整をしなければならず時間がかかりました。

アサヒキャスターの問題と、このレンガの大きさがまばらな問題とが重なって、耐火レンガの最初の数段が芋目地(縦・横共に目地が一直線に揃うような並べ方)になってしまい、思っていたようにはできませんでした。

②硬さがまばら
レンガの硬さはグラインダーで切るとすぐ分かります。
妙に柔らかいレンガもあれば、なかなか切れない硬いレンガもあります。
そのムラがかなりあり、段々と見た目で硬いレンガか柔らかいレンガかが分かるようになってきました。
国産レンガをいくつか切ったところ、このような硬さのばらつきは感じませんでした。
窯を長く使う予定なら、予算があるなら、断然国産レンガをお勧めします。その差は歴然です。

耐火レンガを並べ、ふるったアサヒキャスターをレンガの間に入れ込みました。
レンガの大きさが一定ではなかったのと、目地が狭かったので苦労しました。

予想外だったこと③目地と設計図

アサヒキャスターの使い勝手がよく分からなかったこと、耐火レンガの大きさがまばらで目地が計画通りにいかなかったことを上に記載しましたが、設計の段階である程度の目地を計算するべきでした。

もし次に窯を作ることがあるなら、耐火レンガの目地は1cmで最初から設計します。目地は大きめにとった方が後々微調整がきくからです。
レンガの間の目地を全くとっていない設計と、目地を全て1cmでとった設計では、全体ではひどい時には10cmほどの違いがでます。
目地を大きくとるとアサヒキャスターの使用量は増えますが、設計図通りに進めるなら、設計段階で目地を正確にとる方が無難です。

または、普段雨ざらしにならない場所に窯を作るなら、アサヒキャスターではなく耐火モルタルを使用してもいいのではないかと思います(これは思い付きであって確証があることではありません)
室内に大きな窯を作っているパン屋さんの写真を見ると、耐火コンクリートではなく耐火モルタルを使っているように見えます。接着剤代わりに薄くのばしているのを見ると、少なくともアサヒキャスターではないのが分かります。
その場合、レンガが崩れないように隙間なくしっかりと設計されていることが前提。アサヒキャスターのように型枠に流し込んで使う、というような使い方はできないと思います。

燃焼室作りを動画で見る

基礎と燃焼室を作った時の動画です。